野外スケッチの醍醐味は、その場の雰囲気と瞬間を捉えること。
けれども使える時間と体力には限界があります。この記事では日が短くなってきた秋のスケッチ体験を元に、迫りくるタイミリミットを意識しながら、どうスケッチを切り上げたらいいのかポイントをご紹介します。
作品のクオリティはもちろん。後からの追記も考えて、現場でしか出来ないことをできるだけすませておくのが成功の鍵です。
ポイント1:疲れてミスが増えてきたら、大失敗する前に切り上げる
この記事は12月の頭に書いています。先日外で野外スケッチをしていたのですが、久しぶりにちょっと難易度が高いものに挑戦していました。紅葉したかなり大きな木を書いていたんですね。
その日は休憩なしで、すでに2時間ほど野外スケッチしていました。体力的にもそろそろ限界が近い状態です。
また、時刻も16時を回っていました。秋の日没は早く、辺りは夕日に照らされて暗くなりつつあります。スケッチできるのは、長く見てもあと30分ぐらいだろう、という状況でした。
ずっと立ちっぱなし、飲まず食わずでスケッチしてきたのでスタミナも残っていません。
そして11月の肌寒さでだいぶ体も冷えています。寒さで指先がかじかみ、精細な描写が難しくなりつつありました。目立たないけれども、小さなミスも増えて 来ています。さらにはインクも切れそうというギリギリの状況。
そこで致命的なミスを犯してしまう前に、もうこのスケッチは切り上げてしまおうと決めました。
あとはカフェにこもって写真を見つつ、少し足りない部分を追記したり、仕上げの文字入れを行って完成させます。
ポイント2:追記で問題が起こるリスクが高い部分でラストスパート
ただ、現場でないとできないこともあります。野外でしか描けない部分はなるべく終えるべく、ラストスパートに入りました 。
実際その場で描いた作品って、うまく言語化するのが難しいんですけれど。その時私が見たものや感じた風、といったリアルな体験がミックスされた作品になってるんじゃないかと思います。
こうした”ちょっと粗い線”で構成されたスケッチに後から追記をすると、 疲れ切った線の中に綺麗な整った線があって目立ってしまうことも。作品の調和が崩れるといったらいいでしょうか。
万年筆の場合はインクの変化にも注意
私は万年筆を使っているので、インクの表現にも注意しています。今のインク残量、今の気候だから「この色」「この太さ」で出ているというのがあるからです。
今は茶色のインクを使っていますが、過去作を見返すとこうした条件に左様されているのがよくわかります。
これもまた追記がうまくいかない原因となります。普通の茶色と少し明るい茶色といった程度の色の違いならインクの多様性にしか見えませんが、黒と茶はかなり色味が違います。
そこで後日の追記で問題が起こったら困るという部分は、できる限り野外で終わらせるように心がけています。
タイムリミットまでに間に合わない場合、後からの追記でうまくいくかどうかはもう賭けになります。私の場合概ねうまくいっていますが、それでも数作に一作は「うわー、これだめだー!」となるものはあります。
ポイント3:限られた時間と体力の中で最善を尽くす
もう少し書き込める余地はあったけれど、これでいいんじゃないかな。最高ではないけど、最善ではあると自分が感じられるところを目標にしています。
冒頭でふれたスケッチをしている時。風が強く吹いて周囲の落ち葉が一斉に吹き上がり、木の梢からもパラパラと、斜めに雪が降ってるような降ってくる瞬間がありました。私にとってとても印象深い瞬間となりました。
この時の作品がこちらです。その瞬間の雰囲気が やはり少し現れています。寒さと疲れでヘロヘロになりながら、それでも日没ギリギリまで粘りました(※風邪をひくので、良い子は真似しないでください)。
一期一会の絵になっているだろうか
美しく正確なスケッチは今後AIが描いてくれます。自分の手であえて描くならば、今その瞬間にしか描けなかったと思えるような絵を描きたいです。
次来た時もきっと同じように描けるだろう。きれいすぎて非の打ち所ががないと思えるスケッチになってしまったとしたら、 個人的にはむしろ失敗作だと考えています。
寒さや足腰の痛みに耐えてまで外で描くのは、そんな人にしか捉えられない瞬間に出会いたいからなのかもしれません。
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