作品ギャラリー最終更新 2024年9月25日

未経験から風景画ペンスケッチを始めた5年間の記録~どれほどの期間で上達するものなのか

風景画スケッチを始めてから、最初の5年間の上達具合についてまとめた記録です。

未経験の初心者からどう変化していったか、よかったらご覧になってみてください。主に私自身の記録用ですが、これからスケッチを始めたい方にとっては上達の目安にもなるかと(*^^*)

スタート時点での私のお絵描き経歴はこんな感じでした。

  • デジタルならばシンプルなイラストが描ける(手描きだと無理)
  • 風景画は何冊か教本を買ってみたけれど、いつも遠近法で挫折して終了。一作も完成させた試しがない

風景画については、人生において4度目か5度目くらいの再挑戦だったと思います。

目次

1年目:まだ人に見せられるものじゃないレベル

※正確にはもう前年くらいから花などのスケッチ練習はしていましたが、本格的に風景の方へシフトしていったのは万年筆を手に入れてから。そのため、この年を初年度としています。

今見ると卒倒したくなりますが、これでもがんばって一時間以上かけた作品だったりします。まだまだとても人様にお見せ出来るレベルに達していませんでした。

ミリペンによるスケッチ。自信がなさそうなスケッチです……。

万年筆との出会いがすべての始まりだった

長年の相棒となる、TWSBI(ツイスビー)社の万年筆を入手。私のスケッチ活動はこのTWSBIとの出会いが始まりでした。

ペンクリニックにて。万年筆は自分の手に合わせてカスタマイズして使うものだと知ります。

初めての調整が宍倉さんでよかった。調整はあくまで万年筆の個性を潰さないのが大事だと教わった

とにかく手描きに対する自信がなかった

この頃はまだ私の中でデジタル全盛期だったので、風景画スケッチの練習にもデジタルを活用。

でも今思うと、単に手描きに対する自信がなかったのだと思います。

昔から字が汚いと言われ、私の字は社内すべての人間が一目で見分けられたほど。絵の具も小学生の頃から苦手で、今でも生理的にムリ。

絵がうまいと言えば、いつも妹の方でした。美術部に所属していた時期がありますし、デジタルでイラストを描く時も基礎は妹に習いました。私はというと、図工や美術の成績は常に2でしたね(^^ゞ

遠近法をなしで描けるスケッチ法を探る日々

まだ初心者だったので遠くへは行かず、いつも近所の光が丘周辺で描いてました。

当時はとても、「スケッチが趣味」と人に言える自信さえありませんでした。ひと目にふれにくい隅っこで描いて、終わったらそそくさと立ち去る日々が続きます。人に見られながら描くことにもなれていませんでした。

光が丘にある灯台風の煙突が好きで、よく描いてました。

家では、遠近法(パース)を使わない風景画スケッチの情報を探していました。

過去何度トライしてもだめだったのだから、今回また正面からぶつかっても失敗するだろうという予感はありました。

「遠近法なしで描ける方法さえあれば、どうにかなる気がする。本当に遠近法抜きではだめなのだろうか?」

このことをずっと考えていました。――そして、それがあったんです!

遠近法なしでも風景画は描ける。そのヒントをくれたのは海外のスケッチ教本でした。詳しくは以下の別記事にまとめてます。

この頃はスケッチ以前に、万年筆という新しい筆記具にも慣れる必要ありました。ペン先(ニブ)の形状が独特ですし、筆圧をかけずに描くという点も普段使ってるボールペンや鉛筆とは異なります。

ちょうど良く、初心者向けのペンによる風景画スケッチドリルを発見。樹木の描き方など学びつつ、手に万年筆で描くという感覚を覚えさせました。

2年目:野外で描くことになれてくる

2年目を半分過ぎた頃の作品です。初年度に比べると、作風がだいぶ安定してきました

野外スケッチの体験が今必要なことを教えてくれる

どんなに下手でも。野外でスケッチして実践するというやり方は崩しませんでした。

仕事などの関係で、自由に使える時間が少なかったせいもありますが。家でハッチングx100セットなどの基礎練はあまりはやらず、外に出る時間があれば実践練習をなにより優先しました。

このあたり、人によって考え方が分かれる部分だとは思います(^^ゞ

私の場合。風景画スケッチに関しては家で学ぶことよりも、野外で失敗し、あるいは成功して学び取ることの方がはるかに大きかったからです。

体力や時間、作品の損失というリアルな痛みを感じた失敗は経験値が大きい。思い切ってチャレンジしてうまく行ったことのほうが、基礎練習で得られる自信よりもはるかに大きい――。

※あくまで私の場合です

もっと早く描き上げるべく、時短スケッチの手法を求めて

一番の課題はスケッチに時間がかかること。時短で描くコツを探っていました。

この問題が解決してきたのは、スケッチ歴4年目に入ってきてから。遅筆は長年の課題でした

それでも初年度よりは描くスピードが上がり、手元に作品が増えてきました。

カッコいい手書きサインを入れたくて、カリグラフィー教室で個人レッスンを受けたこともあります(でも結局身につかなかった^^;)

遠近法だめだめ病は健在。特に一点透視の構図はその後も長きに渡って、最大の苦手でした。

遅筆、遠近法に続く第3の病が「混み入ったものがだめだめ病」です。これはスケッチ歴5年目でも完治してなかったりします^^; ごちゃっとしているものを見ると、心理的に圧倒されてしまうんですよね。

旅への憧れから灯台を好み、遠くへ行けずに夏の虫と遊ぶ

コロナ禍で横浜スケッチを取りやめる(描こうと思った船が感染源に(;_;))など、なかなか遠出できる雰囲気ではない日々でした。

遠くへ行きたいという無意識が常にあったのか。この年は灯台を好んで描いていました。

生き物のスケッチにも興味を持ち始めたのもこの頃。近所に森のように大きい都立公園がありまして、夏にはカブトムシも出ます。苦手な方もいるかと思いますが、彼らの動きや行動はスケッチのお題としてとても興味深いです。

細い手でぶら下がって落ちるんじゃないかと心配しましたが、これが羽化時のデフォルトらしいです。

万年筆にはまだわからないことがいっぱい

この頃はまだ、万年筆の裏を使う時はおそるおそるやっていました。

人によってニブが痛む、問題ないと意見がわかれてるようなんですよね。いまだにやっていいのか確信がないままま、裏でも描いています(そのうちペンクリで聞こうと思いつつ忘れてしまう)。誰か答えを教えて~。

万年筆といえば。アクシデントもありました。TWSBI使いなら誰でも一度はやる、洗浄分解後に組み立てられない問題(笑)。

これがトラウマとなり、よほどのことがなければ分解しようと思わなくなりました(最近ピストンキツキツなので、そろそろグリスを塗らないとまずそう(汗))

TWSBIはその後ピストンにヒビが入るなどして、5年の間に2度も故郷の台湾送りになっています(;・∀・)

でもその描き心地は変わらず最高で、6年目たった今でも他の万年筆をメインに変えようとは思いません。

3年目:スケッチについての考察を深める

これまでに比べて細かいところまで目が届き、作品全体のバランスがとれてきたように思います。

野外スケッチの効率化を考える

野外と帰宅後で、スケッチの分業を考え始めました。これは、「3段階早描きスケッチ: 旅先で楽しむ」(佐々木清著)が教えてくれた考え方。

効率という意味では、やはり下書きなしの一発描きが最速。でも当時はまだ失敗ばかりでした。この絵は珍しくうまくいったもの。

一発描きの成功率が50%越えてきたのはスケッチ歴5年目から

作品としての見せ方にも意識が向き始める

「視線誘導」(※絵を見る人の目が向く位置を描き込み密度等により誘導する)の意味を知ったのもこの年。

絵はただ描くだけじゃなくて、明確な意図持って色々仕掛けておくものだったんですね。参考図書は「Tate: Sketch Club Urban Drawing」

またクオリティを一定に保つため、これまでその時次第だったスケッチ用紙を書籍用紙に統一しました。

同じ紙を使い続けるとその時のコンディションやクセ、上達の具合がわかりやすい、というメリットに気づきます。

野外スケッチになれて、心身共マッチョになってくる

やっと「風景スケッチが趣味」と人に言える自信がついてきました(*^^*) メンタル的にも強くなり、少し上のレベルのお題にも失敗を恐れず取り組めるように。

失敗しても無駄じゃない。ちゃんと経験値は蓄積されている。

それから野外スケッチでバテないよう、ジムで筋トレを始めました。これが予想以上に効いて、スケッチ中気になっていた膝の痛みも数ヶ月で解消♪ 

通うがきっかけは肥満なのはさておき。野外スケッチャーには筋トレ、メリットが多いです

野外スケッチって、基本的には登山と同じアウトドア系の趣味だと思います。アラフォー以降は体力を鍛えておかないと厳しい部分も(灯台や山頂に登れない(;_;))。

体力的にきついな…と感じたら、筋トレはもちろん、山用の筋肉痛軽減サプリなども有効です。

絵を継続して描き続けるためには、心の持ち方や考え方など、心理的な面も重要ではないか――。絵のスキル以外の課題にも目が向くようになってきました。

描き続けるためには自信・やる気をキープする必要がある

考え方が絵描きらしいなってきた……?かも

スケッチ活動が長くなってきたことで、こんな悩みも出てくるように。絵描きあるあるらしいです。

実際日常ネタが続くとすぐフォロワーが減りますしね……。これは知り合いの絵描きさんもたまにぼやいてます。

風景画スケッチの本を出そうかな、と計画したのもこの年。私の中で言語化できる程度まで経験値がたまってきたので、遠近法なしのスケッチスキルとしてまとめてみようかと。

でも原稿をまとめるている間に、普段のスケッチでまた新しく学んだり気づいた部分も多くて。そのうち更新しなければ…と思ってるうちに、いつしか忘れました(笑)。いつかちゃんと出したいです。

4年目:新しい手法や考え方にふれる

この年は冬の野外スケッチをお休みして、初夏から活動をスタート。

やっと画像編集のやり方も習得し、きれいな状態での作品投稿が可能に

海外から新しい概念、新しい手法を学ぶ

この年学んだことで一番影響受けたのが「Look and Draw」という考え方。

「見て、描く」。言葉の通りなんですが。これ、観察スケッチの真髄を意味していると思います。遠近法なしで風景画を描くなら、もう観察力が命なんですね(ということを、この時まで気づかなかった)。

私は「見たままに描く」と自分の言葉に置き換えて、常に意識するようになりました。

目て見て覚え、覚えたものを紙に記す。この繰り返しが観察スケッチの基礎となる。

それから「連続線描(一筆描き)」。これも野外スケッチにおける、時短テクニックとして非常に役立ちました。

タイトルのレタリングを始めたのもこの頃。例のごとく、海外の絵描きさんの受け売りです。

大文字アルファベットに縦線を入れて、中を塗りつぶすとちょっとカッコよくなります✨

商品の陳列を一筆描きの活用で描いてます。

そうそう。この年は細線描画用にパイロット社のキャップレス万年筆を導入しました。

上がキャップレス。下がTWSBI

散歩しながら寄せ集めスケッチがマイブーム

散歩しながら気になったものをしていく、寄せ集めスケッチをこの頃よくやりました。

人物スケッチにも興味を持ち始めましたが、こちらはまだまだ。

昼間スケッチできる時間が減ってきて、夜に描けないか?と試行もしていました。

どう自分の持ち時間・体力と折り合いをつけて、スケッチ活動を続けていくか。80歳まで描き続けるにはどうすればいいか。

今日まで続く私の課題です。

ついに個展の勧誘が……! 旅スケッチ講座も開催

この年。生まれて初めて、「個展を開きませんか?」と勧誘を受けました。

――ええ。わかってますよ、絵を描く人になら誰にでも送ってるものだってことは(フォロワーさんにも同じギャラリーから誘われた人がいた)。でも私はこれまで一回もそんなDM受け取ったことがなかったんです(^^ゞ

いくらご案内とはいえ、先方だって下手な初心者には送らないはず(たぶん)。私もこれで初心者レベルを超えてきたかな、と内心ひそかに喜んでいたのはナイショ。

風景画スケッチ講座を企画してみたのもこの年。前年に本の出版はボツりましたが、学んだことは何かしらの形にしてみたかったんですよね。

結果的に2名の受講がありました。感謝。

仕事や体調不良であまり描けなかったけれど。「Look and Draw」や「連続線描」など、今でも私のスケッチの要になってるスキルを習得したり、サイトや講座を企画したりと未来への下地となった年かもしれません。

5年目:風景画スケッチャーと名乗れる程度には自信を持つ

コロナ禍も徐々に落ち着き、待ちに待った遠方地への旅行が解禁! これまでの腕試しをすべく、長期(5日間)のスケッチ旅へ出かけました。

大きな転機になった年だと思います。スケッチ旅を境に、ワンランクレベルアップしたのを感じました。

一年目のスケッチと見比べると、「やっとここまで…」という感慨があります。

スケッチ旅(という名の武者修業)で早く描けるように!

スケッチ旅では、トラベラーズノートを初めて使いました。

普段使っているA5が縦長なのに対し、正方形に近い縦横比のトラベラーズノート。

ダイナミックな構図が可能で、それがまた旅気分を盛り上げてくれます。気に入ったのでこの翌年の旅でも採用しました。

利用したのは画用紙タイプのもの。こんな風に見開きの絵が描きやすいです。

旅の間に、このノートのページをすべて埋めるという目標を自分に課しました。観光地へ来たのにほとんど観光せず、スポットからスポットへと周り、ひたすら絵を描きました。

そうして5日間、時間に追われながら描きまくったおかげでしょうか。

初心者の頃からずっと遅筆体質だったわたくしではありますが、やっとスピードアップに成功しました!

まだまだ人より遅いけれど、中の下くらいには改善したと思います。花一本でさえ一時間以上かかってた頃が懐かしい(´;ω;`)

本腰入れれば、これくらいの絵が一日に3・4枚は描けるように。

スケッチ描画の変化

これまではTWSBIの補助で細線用に使っていたキャップレス。

繊細な描画に向いてるらしいと気づいてから、花見のスケッチなどTWSBIではどうにもごつさが目立つスケッチで活躍しています。


「3段階早描きスケッチ: 旅先で楽しむ」(佐々木清著)に出ていた時短法をヒントに、暗い部分は濃いめの鉛筆やダーマトグラフで塗って省略するというやり方も試してます。

ダーマトグラフだとかなり濃い色を出せるのがグー。でもペンケースの中は真っ黒(;・∀・)

人が入ってる風景画も増えてきました。人がいる方が雰囲気も出ますしね(*^^*)

まだ動いてる人はスケッチできないけれど、ちょっと立ち止まってくれればなんとか。人物中心のスケッチは今後の課題。

また続けていくうちに、色々変化してくると思います。さらに5年後、今とは全く違うテイストの絵になってるかも。

野外スケッチでの出会いも楽しめるように

この5年間、野外スケッチ中に様々な方から声をかけられました。中でも一番うれしかったのは、この子どもたちの素直な反応かも。

正直な子どもたちに褒められるなら、私も一人前のスケッチャーになれたのかも

あと忘れられない出来事として。スケッチ旅で知り合った方と東京で再開し、スイーツをごちそうになりました(*^^*)

庭園でガレットを食すという優雅なひと時を体験。

そして。ずっと宙ぶらりんだった、絵のサイン。5年の節目でオーダーメイドの落款印を作りました。いつの日か、個展を開ける日を夢見て。

雅号はAIと相談しながら決定しました。

ずいぶんと長い話を読んでいただき、ありがとうございました。

スキマ時間をかき集めるようにして続けてきた、スケッチ活動。「なにか為すことはできたのだろうか」と思う時もありましたが、5年経って眺めてみると小さな積み重ねが大きな成果になっていたのを感じます。

また5年後に続きをまとめてみたいと思います(*^^*)

ここに出てきた以外の作品を見たい方は、以下のページにまとめてあります。もう少し新しい、2024年度の作品もあります。

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