ペン(万年筆)で風景画スケッチを描く手法は独学で覚えました。
絵の教室や講座はいくつか参加したことがあるものの、結局「描ける」という実感を得るレベルに達することができませんでした。どうも私の場合は誰かに教わるより、試行錯誤を重ねて自分に合うものをつかんでいくほうが合っていたようです。
私のように独学している誰かの参考になれば、とこれまで影響を受けたスケッチ教本をまとめてみました。
洋書が多くありますが、今はスマホのGoogleレンズというアプリを使えば簡単に日本語訳できます。英語が苦手な方でも十分意味を読み取れるのでご安心を。
遠近法を使わなくても、風景スケッチはできると教えてくれた本「Freehand Sketching: An Introduction」
「Freehand Sketching: An Introduction」(洋書)では、ステップバイステップのやり方は基本的な部分しか紹介されていません。どちらかというと、描き方ではなく考え方を教えてくれるタイプの教本だと思います。
それでも遠近本をマスターしないと風景画は描けないと思っている方には、転機となる可能性を秘めた一冊かと。日本で売られている風景スケッチ教本の多くは、遠近法の習得を前提として書かれているからです。
海外ではこの本のように、絵を専門としない建築学科の生徒などへ向けて遠近法を前提としないスケッチ教本も出ています。
私のように遠近法でつまづいてしまい、先へ進めていない方はぜひ目を通してみてください。一般書よりはやさしい英語なので、各翻訳アプリでもかなり正確に訳してくれると思います。
草一本の描き方から教えてくれた、この世でいちばんやさしい風景スケッチ教本「Pen and Ink Workbooks」シリーズ
私が知っている限りではありますが。この「Pen and Ink Workbooks」よりやさしい風景スケッチ教本は世界中探してもないと思います。
それこそ、草一本、岩一つの描き方からドリル形式で地道にでも着実に教えてくれる本です。小学生でも取り組める難易度だと思います。この本の存在を知った時は本当に感動しました。
私は万年筆でスケッチを始めたのですが、万年筆による風景スケッチの作例本ってかなり少ないんですよね。
絵の本場はやはり海外。日本になくても洋書にあるのでは?と教本巡りをしていたら、この本を見つけました。
シリーズ物になっていますが、Kidle読み放題に入っていると数冊は無料で読めます(2024年3月現在)。リンク先のページで、著者名をクリックして下さい。他の本も確認ができます。
英語レベルはかなりやさしめ。文章も短めかつ同じ単語の登場が多く、人によっては辞書なしでも読めるかも。
他の風景スケッチャーの作例を見たいときに便利「The Art of Urban Sketching」
もし研究用にスケッチ作品集を手元に置くなら、この「The Art of Urban Sketching: Drawing On Location Around The World」をおすすめします。300ページ超えの大ボリュームです。
初心者のスケッチャーさんから上級者まで、何度でも見返したくなる一冊だと思います。
自分でも何作か描けるようになってくると、「他の人は木をどうやって描いてるんだろう?」など他人の作例が気になりますよね。そんな時リファレンス用にこの本があると重宝します。
また、多くの人がスケッチにかかった所要時間も載せてくれているのもポイント。
私は一時期遅筆であることに悩んでいたので、この本でもっと時間をかけて描いている人がいるのを見つけてホッとしました。どんなに時間がかかっても、風景スケッチャーとして問題はないんだなと。
この本はプロの絵描きもアマチュアもひっくるめて、世界中からバラエティ豊かな作品を集めています。だから他の作品集よりもずっと、自分のレベルに近い作品が見つかります。
旅スケッチデビューする前に読みたい「3段階早描きスケッチ」
実際外で風景スケッチの練習を始めると、ひとつの壁にぶち当たります。それは一枚を描き上げるのにあまりにも時間がかかること。
風景スケッチャーの人たちはこの問題にどう対処しているか調べてみると、手早く仕上げる時短テクニックを用いてるらしいことがわかりました。
じゃあ、限られた時間で作品として仕上げるにはどうしたらいいのか。その質問に答えてくれるのがこの「3段階早描きスケッチ」です。
著者は水彩やパステルで着彩して仕上げていますが、線画の過程に本の解説の多くを割いてくれています。私のようにペンスケッチのみやってる人にも十分参考になります。
個人的には一番実用性が高かった本です。この本をヒントとしてスケッチのやり方を改良し、以前よりも早く描けるようになりました。
スケッチスタイルの使い分けの実例が参考になる「魅せる水彩風景スケッチ」
著者の佐々木清さんという方は、本書のような時短スタイルも得意な一方。時間をかけた繊細な絵も描ける方です。
先ほどの本を読んだ後、この「魅せる水彩風景スケッチ」を見ると同じ描き手なのかと驚きます(※購入後しばらくするまで、同じ人の絵だと気づきませんでした)。
※この本自体は、中級者向けの作品集・ヒント集といった趣です。絵の描き方のハウツーを知りたいスケッチ初心者さんには他の本をおすすめします。
クリエイティブライセンスという考え方を教えてくれた「Tate: Sketch Club Urban Drawing」
「Tate: Sketch Club Urban Drawing」は一人の絵描きさんによる、建物を中心とした風景スケッチの教本です。
優しめの英語で描かれていますが、描き方の手順がやや省略気味。構図やお題も難易度が高めのところから話が始まるので、レベル的にはスケッチ中級者さん向けかと。私もスケッチ活動を始めて数年経ってから入手しました。
初心者レベルを抜けた人が、さらに上を目指したい時に読んでほしい本です。
描き方のハウツー本としては省略気味ですが、その分著者のスケッチに対する思考が詳しく述べられています。スケッチに慣れてきた人でも、なんらかの新しい知見を得られると思います。
個人的に興味深かったのが、「クリエイティブライセンス」についての解説(クリエイティブ・コモンズではないですよ(^^ゞ)
ここまでいろいろな風景画の教本を見てきて、薄々そうなのかなとは感じていたのですが。風景画って、実は改変だらけなんですね。
辺鄙な風景に花を足す、などは朝飯前。建物の影になってる時計塔をちょっくら横へずらす、木を丸ごと消す、なんてことも行われています。
風景として見栄えが出るように、描き手によって演出が施されているといったらいいでしょうか。この点が写真との大きな違いかもしれません。最悪、絵を見て感動して現地に行ったら思ったよりしょぼい風景だったなんてことも(笑)。
でもこのあたり、やってしまっていいのかはっきり言及している教本がなくて。他の本でも何度か見かけていた「クリエイティブライセンス」という単語の意味も、詳しい例を上げてくれたこの本でやっとわかりました。
モノクロスケッチにおけるコントラストの高め方、街における怪しまれない人物スケッチの練習方法なども紹介されています。初心者レベルを抜けてきたスケッチャーさんが読むといろいろ得るものがある本です。
遠近法を使わず、見たままに描くというスケッチを目指して
以上、ペンによる風景スケッチというテーマで個人的に影響を受けた本をまとめてみました。
“遠近法を使わず、見たままに直感的に描く”という私のスケッチ法の土台となった本たちです。
よくある遠近法や精密画の内容はご紹介した本には含まれていません(私自身には合わなかったので…)。ハッチングのやり方など形から入りたい方は、「Pen and Ink Drawing: A Simple Guide」など教科書的な本の併用をおすすめします。
もう人間の歴史が始まって長いので、おおよそのアイデアはこの世に出尽くしていると言われています。ペン画も古代エジプト頃から続いてきたため、その手法はひとつの学問のように確立されています。
けれども、アイデアの組み合わせだけは無限の可能性があります。
その際手助けになってくれるのが絵の先輩方が描いてくれた、これらの教本です。
ご紹介した本が少しでもあなたのスケッチライフのヒントになれば幸いです。
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