作品ギャラリー最終更新 2024年9月25日

スケッチ中に「ビューティフォー!」と声をかけてくれた、中華系姉妹の話

野外スケッチをしていると、年に数回は声をかけられます。それ自体はもう慣れっこなんですが、今回始めて外国語を母語とする人に声をかけられました。

それもうちの姪っ子と同じ年頃、5・6歳前後と思われるかわいらしい姉妹でした。

目次

幼い姉妹との出会い

夏は暑く体力的に厳しいので、この時期の野外スケッチは基本お休みにしています。

でも習慣とは急にはやめられないもの。やっぱり外で描きたくなるときがあります。

どこか涼しい室内でスケッチできる場所はないかな……。

そこで思い出したのが東京都庁です。

都庁には南北2つの展望室があり、どちらも無料で入れます。

このうち南の展望室は夜21:30まで解放。夕方涼しくなってから出かけてきても十分間に合います。

そんなわけで、先に用事をすませてから都庁へとやってきました。今は夏なので日が長く、19時でもなんとかスケッチできる程度の明るさが残っています。

本当はすぐ展望台へ登るつもりでしたが。入り口前の広場に立つと、なんとも風景画向きの展望が広がっているじゃないですか。

スケッチャー目線で眺めると、都庁はなかなかにカッコいい

これを描かないのはもったいない。急遽予定を変更し、広場で描くことにしました。

ふと柱の壁を見ると、プロジェクションマッピングの上映案内が貼られています。

税金の無駄遣いだと最近噂になっているやつですね^^;

ちょうどこれから始まるらしく、円形の広場の端に人が集まってきました。2、30人くらいはいたでしょうか。平日のイベントにしては多いのかな。

私が出会った姉妹も両親に連れられて、この広場へ来ていました。

なぜかスケッチに興味津々の姉妹

ほどなくして、プロジェクションマッピングの上映が始まりました。あたりは少しずつ暗くなっていきます。

夕暮れ時のスケッチは時間との勝負。私は美しく彩られているビルの外形を追うのに夢中で、上映内容はたいして観ていませんでした

ーーと。なにやら視線を感じて振り向くと、やけに近い距離に女の子がいます。年頃は私の5歳の姪と同じくらい。

女の子は肩がふれあいそうな距離で私の手元を眺めています。

近くにいる両親の会話からして、中国人か台湾人あたりかな(アジア系ドラマはよく見るので、中国語か韓国語かくらいはわかる)。

姪っ子もよく私にくっつくすれすれくらいの位置に体を寄せてきて、「ねえね、なにやってるの?」なんて尋ねてきます。甘えたがりで遠慮を知らず、人との距離感がとても近いお年頃。

どこの国もこの年頃の子どもは同じなんですね~。

私は姪っ子で免疫ができていたので、気にすることなくスケッチを続けました。

その女の子は意外にも飽きることなく、じっと食い入るようにスケッチの様子を見ています。せっかく観に来たプロジェクションマッピングには見向きもしません。

たまに離れて両親と妹の元へ行くけれど、また私のそばへ戻ってきて観察を続けます。

そのうち妹もやってきました。こちらも姉と同じように、幼い子供とは思えない集中力で私の手元を見ています。

こうして上映中、ふたりの姉妹は私と両親の間を行ったり来たりしていました。

世界で一番美しいBeautiful

本当はこのスケッチを15分ほどで仕上げて、展望台へ登るつもりでした。

でもふたりがこんなにも見てくれるものだから、描き込むつもりがなかった場所までわざと描いて、鑑賞時間を引き延ばします。

窓を多めに描き込んで作業時間を増量(パステルは家で追加)

するとそれまで黙って絵を見ていた、お姉さんの方の女の子がそっとつぶやきました。

「ビューティフォー!」

突然絵を褒められたことよりも。その女の子の口にした単語の美しさの方に私はビックリ。

ビューティフォー:Beautifulって、こんなにきれいな単語だったっけ?

これまで英語の授業やTOEICの勉強、洋画などで数え切れないほど聴いてるはずなのに。今さらながらに、Beautifulという単語そのものも美しいのだと気づきました。

それはこれまでの人生で聴いた中で、一番美しいBeautifulでした。

「サンキュー」

ありがとね、という気持ちをこめて女の子に返します。この子は日本人の私には中国語では通じないだろうと、あえて英語で伝えてくれたんですね(そう気づいたのは家に帰った後)。

私のスケッチよりむしろ、彼女のビューティフォーという発音の方が貴重で美しい。とてつもない贈り物をもらった気分になりました。

まだお世辞も知らない子どもが実感を込めて口にしたBeautifulだから、こんなにも美しく聴こえたのかな。そうだったら嬉しい。

幼い子どもも実はスケッチに興味があるのかも

どんなに先延ばしにしても、スケッチにはいつか終わりが来るーー。

ちょうどプロジェクションマッピングも終わったあたりで、私は「フィニッシュ」と姉妹に終了を告げました。

とっさに口にしたけれど。作品の完成って、”Finish”でよかったんですかね。

ついでに、さっきカフェで買いたスケッチも見せてあげました。こちらもわぁーっと顔をほころばせて喜ぶ姉妹。今思うと、もっと他の作品も見せてあげればよかったです。

「バーイ」

名残惜しいけれど、夕飯の支度があるので帰らなければ。私は姉妹に別れを告げて都庁を後にしました。

本来の目的だった展望台へは登らず仕舞いだったけれど、この姉妹と出会えただけでここへ来た甲斐があったというもの。

私の姪っ子がスケッチに興味を持ったのも、かなりレアなケースと思っていたけれど。もしかするとこれは大人の思いこみ、なのだろうか?

5歳前後の子供は、かわいい猫のような「イラスト」には興味があっても風景画のようなリアル調の絵には興味がないと思っていました。

ひょっとすると。単にふれる機会がないだけで、姪っ子や今回の姉妹のように実は興味を持っている子も一定数いるのかもしれないですね。


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