作品ギャラリー最終更新 2024年9月25日

万年筆が欲しいけれど、店頭で買うのは敷居が高い(心理的難易度が高すぎる)という問題

万年筆に興味がある。初めてだし、通販ではなく、実際お店で物を見てから買いたい。できれば試筆もしたい。

でも万年筆売り場って、高級感があふれていて敷居が高すぎるっ……!

――わかります。初心者さんあるあるですよね。

私も当時、気になってるメーカーの万年筆がありました。しかも住んでいた街の近くです。いつでも行ける距離だったものの、足を踏み入れるまでに数ヶ月はかかりました。

でも今思うと、ビクビクしてたのは最初だけですね。2回目からは近所のスーパーのように気軽に訪問してます(笑)。

誰かの勇気になることを祈って。今日は、私が初めて万年筆を買った日のことを書いてみたいと思います。ちょっと長いのですけれど(^^ゞ

目次

あこがれの君~TWSBI(ツイスビー)

TWSBIという台湾メーカーの万年筆が風景画スケッチにも良いらしい。

そんな情報を海外のアーバンスケッチャー(街絵描き)のブログや掲示板で知りました。

1万円と万年筆にしてはお手頃価格。旅スケッチでも便利な大容量の吸引式。落としても傷がつきにくく、目立ちにくい丈夫なボディ。

※追記:物価高による価格改定で、私が買ったものは1万6千円くらいに値上がりしています。ECOという簡易ボディのシリーズはまだ一万円前後で購入できます。

――欲しい。一度見てみたい。

TWSBIに関する日本語の口コミ、海外のアーバンスケッチャーによるレビューには繰り返し目を通しました。

欲しい色もニブのサイズも自分の中ですでに決めていました。毎晩ネットでTWSBIの写真をながめてはうっとりしていました。

それなら早く買いに行けよって感じですよね(笑)。

ただでさえ高級品の万年筆が、デパートの中で売られてるという敷居の高さ

TWSBIは新宿の伊勢丹に行けば、豊富に揃っているらしい――。

もちろん、この情報も早くからつかんでいました。けれども、伊勢丹の中にあるというその売場行く勇気がどうしても持てませんでした。

恥ずかしながら、デパートで買い物したことなんてほとんどなかったんです。デパ地下の比較的リーズナブルなスイーツですら、年に一度買うか買わないくらい。

食べ物以外だと、はるか昔に高校の制服を買ったくらいでしょうか。

しかもおしゃれにてんで興味がなかったので、デパート行きに合うような服もありません。普段公園を散歩しているような服とリュックで行ったら、明らかに浮きそうじゃないですか。

――行ってみようかな。どうしようかな。

そんなうじうじした状態が数ヶ月続きました。

思い続けて。やっとのことで会いに行くと決めた

その日は、東京ペンショーへ出かけた帰り道でした。

様々なメーカーの万年筆が集まるイベント。ここでいろいろ比較しながら選べば、きっと私に合う一本が見つかるはず……!

そんな期待からでした。ちなみにTWSBIは今回のイベントに出展していません。それでもスケッチ用に良いものが見つかれば、もういいやという考えでした。どうしても買いに行く勇気がなく、もはやこじらせてました^^;

結果として、このペンショーは空振りでした(あくまで私にとっては、です。詳細はまたどこかで)。

苦手な早起きをがんばって、軍資金もしっかり用意して。今日こそはスケッチの相棒となる万年筆を手に入れる!

と。かなり気合を入れていたので、なにも買えなかったのはちょっとショックだったんですね。

せっかくの休日に大きな失望を抱えて帰宅する。明日からはまた仕事。つらい……。

そんなとき、ふと胸によぎったんです。TWSBIの存在が。

ペンショーの会場を2周・3周とまわり、あれだけよりどりみどりだった中でも気に入ったものがなかったのだから。私が選ぶべき万年筆はもう、TWSBIしかないのでは?

降りるはずだった地元の駅を通り過ぎて。そのまま新宿を目指しました。目指すはTWSBIの待つ伊勢丹です。

ついにやってきた、伊勢丹新宿店

高級感あふれる大理石らしき床を進みながら、ひしひしと場違いな空気を感じます。でももう来てしまった。行くしかない。

生まれて初めての万年筆売り場です。TWSBIは比較的安価なブランドなんですが、ショーケースにはもっと高価なハイブランド品がずらりと勢ぞろいしています。

あまり熱心な様子に見えないよう注意しながら(店員に声をかけられてしまうから)、単なる通りすがりを装いつつ、さりげなく横目でTWSBIを探します。

そして、ついに壁際のショーケースに見つけました。欲しい色がないか探していると、店員さんに声をかけられてしまいました。

――落ち着け、私。TWSBIをお持ち帰りするくらいのお金なら、ペンショーで使わなかった軍資金がある。恐れるものはなにもない。

実物をご覧になりますか?という提案をされて、ありがたくお受けすることにしました。ここまで来たら、もう後には退けない。

初めての試筆と意外な出会い

店員さんが取り出した、分厚い手帳のようなペンホルダー。ここに万年筆がおさまっていました。

さんざんネットでリサーチ済みだった私は、買うならダイヤモンドALというシリーズのものにしようと決めていました。

でも店員さんがECOなど他のTWSBIシリーズもすすめてくれました。せっかくなので、全部試してみることに。

実際持ってみて、はっと気付きました。

そうか、同じメーカーものでもシリーズによって重心がまったく違うんだ。キャップを後ろにはめるかどうかでも変わってくるんだ。

結果的に。1番手にしっくりきたのは当初考えていたものではなく、TWSBI Mini ALというミニサイズの万年筆でした。

自分に合った重心の万年筆だと、とても描きやすいんです。万年筆ならどれでも普通に描きやすいと思っていたので、意外な発見でした。

残念ながら、私の欲しかったエメラルドの軸色はなかったけれど。こんなに手に馴染むものに出会ってしまって、手ぶらで帰れるわけがない。もう迷うこともなく、即決で購入を決めました。

インクの選び方・万年筆の扱い方を教えてもらう

万年筆を買うなら、もうひとつ必要なものがあります。そう、インクです。

インクはものによっては詰まると聞いていましたが、このあたりも初心者でよくわかりません。メーカーごとに合う合わないもあるらしいので、お店の方におすすめを聞いてみることに。

これまた分厚いインクサンプル集を持ってきてくれました。

TWSBIと相性が良いという2・3のメーカーを紹介していただき、色見本を見ながらスケッチ向きの茶色いインクを選びました。

同じインクを使っていてもたまに洗浄したほうがいいこと。TWSBIは分解洗浄ができるものの、組み立てた後に戻せず持ち込む人が多いこと、など。会計の待ちの間にいろいろな豆知識も教えてくれました。

それでも後日使い始めで苦戦したり、分解して戻せなくなったりと色々ありましたが。購入時に話を聞いていなかったら、もっとひどいことになっていたと思います。

メーカー公式の販売代理店だったので、TWSBI特有の構造にも詳しかったのだと思います。単に取り扱っているだけの文具店では、こういった詳しい話まで聞けないかもしれません。

TWSBIを連れて帰る

購入した万年筆はデパートの立派な紙袋に入れてもらい、手渡されました。

パソコンとか必需品以外で、こんな高いものを買ったのは(インクセットで1.5万円くらいだけど)生まれて初めてかもしれません。

と、本日の営業終了を告げる放送が流れてきました。あぁああ、これまで気づかなかった。私、閉店間際のお店に飛び込んじゃったんだ……。どうりで周囲に他のお客さんがいなかったわけですね(すみません)。

店員さんは私を連れて、閉店作業が始まっているフロアを抜けて、エレベーターホールまで案内してくれました。デパートからすれば、1万円なんてたいした売上でもないだろうに。最後までお見送りしてくれて感動。

田舎者が閉店間際にどうもすみませんでした。そして、ありがとう……!

その後の万年筆売り場への訪問

ここからは余談です。TWSBIを買った、伊勢丹新宿店のステーショナリーコーナーにはその後も何度か足を運んでいます。

TWSBIの公式販売代理店ということで、使い方を相談したり、おかしくなったときは修理の受付窓口にもなります。

ここから2度もTWSBIをふるさとの台湾送り(※修理)にしましたよ。ふふふ……。

インクも2本目からは自分で選んでいたのですが、これまた相性の問題なのかトラブル続きで……。結局また伊勢丹で店員さんにおすすめを見繕ってもらうようになりました。

お店によっては、ペンクリニックもこの万年筆売り場で行われています。

ペンクリニックでは、万年筆の調整を行ってくれます。インクが詰まった、線がかすれる、もうちょっと線が太く出るようにしてほしい、なんて時の駆け込み寺です。しかも無料のところが多いです。

私も蔦屋書店や東急ハンズの万年筆売り場でお世話になりました。

これから初めての万年筆を買いたい方へ

どうしてもお店に行く勇気がないときは

万年筆は購入後もなにかとお店のお世話になる機会が多いです。

その意味でも、初めて買う方には店舗購入をおすすめしたいですね。使い方のちょっとした疑問が出てきた時、購入店であれば気軽に相談できます。

それでも心理的にどうしても無理っ…!という方。まずは練習で、ペンショーや文具博のような万年筆メーカーが参加してるイベントをのぞいてみてはいかがでしょうか。

一万円札がそれこそ千円札のような気軽さでやり取りされてる場面はカルチャーショックですが、すぐになれます^^;

最初は手が震えそうだった数万円の万年筆も。100円のボールペンを持つくらいの感覚で手に取れるようになります。

そして。売る人も買う人も「あれ、意外と普通の人だ。服装だって平凡だ」と気づかれると思います。そこで良い出会いもあるかもしれません。

敷居が高い、お店に入るのが怖い、と思うのは最初の1回目だけ。そこさえ乗り越えてしまえば、楽しい万年筆の世界が待っています。

試筆したいけど言い出せないとき

どんなにネットで口コミが良かったり、界隈で人気の万年筆であったとしても。自分の手に合うかどうかは別問題。

特に初めての万年筆を選ぶ人は、直接店頭で試筆してみることをおすすめします。

私は店員さんから声をかけてもらいましたが、「万年筆を試筆したいんですけれど」と伝えれば対応してもらえます。

シャイな方はショーケース前でうろうろし、気になるものをじっと物を見つめていてください。かなりの高確率で声をかけてもらえると思います。

P・S さんざん気苦労して買ったTWSBIですが、あれから6年経った今もスケッチの相棒としてがんばってくれています。良かったら作品を見てやってください(*^^*)

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