絵描きにとって目は命。
けれども哀しいかな、アラフォーになると老眼が始まり、物の輪郭がぼやけて、正確な形をつかむのが難しくなっていきます。
実はSNSでつながってる絵描きさんも同年代くらいの方が多いのですが。不思議と「老眼で絵を描くのに悩んでる」という話題を聞きません。
老眼の話題はあまり口にしたくないのかな、とも思ったり(本当は私だってそう)
絵描きとして生涯現役を目指すならば、避けては通れない老眼への対策問題。私なりの考えと対策をまとめてみました。
老眼スケッチはこれが悩み!
老眼に苦労しながらの風景画スケッチを、便宜上「老眼スケッチ」と呼ぶことにしました(笑)。
老眼についての基礎知識はこちらからどうぞ。
もうほんと、色々困っています。あまり聞いていて楽しい話じゃないと思いますが、まずは老眼スケッチの現実をご紹介します。
虫など、近くにいるもののスケッチがかなり難しくなった
「すぐ近くにいるのに、どうして見えないんだ~~!」と何度絶望したことか。
眼科では「あと5年は今の眼鏡が使える」と言われましたが、実際は5年持たなそうです。PC仕事で目を酷使してきたので老眼の進みが早いのかも。
目の前にいるセミのスケッチすらもう危うい。
この絵はなんとか形にはしたけれど、7割程度しか見えていない状態で描きました。
当然ながら所々実物と違っています(もう途中から諦めて、全体としての形を整えることに注力しました)。
もちろん眼鏡を着用した状態でこれです。
夕方や夜間の視力低下がいちじるしい
これまでは、仕事終わりや夜の買い物ついでにスケッチすることがよくありました。
ところが。老眼がひどくなってからというものの、近くに電灯があっても物の形をはっきり見極められません。目をすぼめてじっと眺める感じになります。
これもかなり苦しいスケッチです(汗)。必死に目をすぼめて描きました。
遠景はよく見えるかというと、これまた見えない
老眼は近くこそ見えにくいものの、遠くは見やすいと聞きます。
定年退職後に風景スケッチを始める人が多いのも、遠くの景色ならよく見えるからだろう。そう思っていました。
ーーいやいやいや。遠くもはっきり見えません。近くも遠くもだめって……もう目全体の性能が落ちているとしか思えません。。
高台からスケッチしていると、確かに手前の部分(5~10m前後)はある程度よく見えます。でもそれより先は目をすぼめて眺める未知の世界です。
もっとも、遠距離が見えないのは若い人も同じですが。
老眼なら、遠くはよく見えるって話じゃなかったんですか~。
本当、もっと若い頃に風景スケッチが出来るようになっていればよかったのに。つくづく思います。
スケッチに諸々の制約が付きまとう
よく見えないと「目が見えないんだよー」という方向に意識が向いてしまい、スケッチの楽しさも半減します。
この制約は生涯続きます。しかも加齢によってより厳しくなってくると思われます。
風景スケッチのための老眼対策
もうここまで書いただけで哀しさいっぱいなわけですが、「じゃあ見えないなら、もう描くのをやめます」とは考えません。
本当に描けなくなるその日まで、もがくつもりです。
もしその日が来ても。野外スケッチをやめるだけで、これまで撮りだめした写真を元に屋内で絵を描くつもりではいます。
今のところ、老眼スケッチに対してはこんな対処法を考えてます。
目がよく見えない状態でのスケッチになれる
1番重要なのは、このよく見えない状態で作数を重ねることかと。まだ老眼というハンデを背負った状態でのスケッチに感覚がなれていないためです。
私のスケッチ法は、1/3ほど海外のスケッチャーさんや教本からヒントを得て。残りの2/3は外で描きながら自然と学び取ってきたものです。
だから老眼に苦戦しつつも描き続けていけば、今の目に最適化された描き方を見いだせるのではないか。そう希望を持っています。
遠景は”らしく見える”描き方を組み合わせる
遠くがよく見えないというのは、老眼のない若者でもある程度は同じです。
本当に正確に高台からの眺めを描こうとしたら、数時間どころか数日かかるかもしれません。
そのようなわけで、風景画の教本を見ると「遠景はある程度それらしく見えるように線を入れていく」という省略法が出ていたりします。
今年、鞆の浦と尾瀬へスケッチ旅に行った時も。どうしても遠くが見えないし、もう気力も持ち時間も尽きそう……! という場面でこのテクニックを活用して乗り切ったことがあります。
線の代わりに色でカバーする
ペンスケッチの着色といえば水彩が王道。
しかし私は昔から絵の具の扱いが生理的に苦手。旅スケッチでよく用いられる色鉛筆も、筆圧が弱すぎて使いこなせませんでした。
また身軽に野外スケッチしたい私にとって、画材で荷物が増えるのもナンセンス。なんですが……。
これだけ視力が落ちてくると、不明瞭部分の描写を色でカバーすることはもうどうにも避けられない(-_-;)
巨匠と呼ばれた画家たちも。晩年は抽象画へ移行した方がいたと聞きます。
目が見えないのであれば、どうしたって具象から抽象に流れざるをえないですよね……。
そこで筆圧不要で塗れる乾燥画材として、パンパステルの併用を始めました。スケッチ旅ではこんな風にパレットへ詰めて軽量化しています。
これから長い時間をかけて。私の絵は少しずつ、シニア期での継続を想定したものへ変わっていくと思います。
今は線画8:着色2くらいの割合でやってますが、将来的には着色の割合が増えるかもしれません。
まとめ:少しずつ老いていく自分を受け入れよう
以上、風景スケッチにおける老眼対策を私なりに考えてみました。
40代というのは、若者とシニアのちょうど中間。入れ替わりの時期だと思います。
これまでの人生でずっと「自分は若い方の人間だ」と思って生きてきたわけです。
それがいきなり「あなたは初老です。若者の時代は終わりました。もう目はこれまでのように見えませんよ」と告げられたところで、心理的にすんなりとは受け入れがたいものがあります。
つい数年前まで、30代の若者区分だったんですよ? それがシニアの仲間入り、なんて言われても……。
老眼のような”自分の老い”に直面した時、良い意味での「諦め」と「受容」が肝心だと思います。
ここで「いやいや、少しくらい見えなくてもまだがんばれるし!」とかたくなに拒んでも。無対策でかえって目を悪くしたり、以前のようには描けなくなった自分に対していらだちを覚えるだけ。
もう私は若くはないと認めた上で。
「老眼用に眼鏡を作り直そう」「弱った目でも描きやすいものを中心にスケッチしよう」「見えにくい部分は色で描写しよう」など、現実的な対策をとっていくのが最善のように思われます。
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