寒い冬でも野外スケッチをしたい。そんなチャレンジ精神旺盛なスケッチャーさん向けに、私の実体験をふまえて冬の野外スケッチのコツをまとめてみました。
昨年も似たようなテーマで記事を書いていたのを忘れていました(完成後に気づいた)。今年の記事では服装に重点を当てています。
なるべく短い時間で一枚を仕上げる、電熱ベストなどの防寒具を用意するといったスケッチのコツ。クリスマスマーケットなど冬ならではのスケッチの楽しみ方などをご紹介します。
やるからには準備を万全にして、冬の冷たい空気の中へ飛び込んでいきましょう♪
冬スケッチはここが楽しい
キンキンに冷えた空気の中で描くという新鮮な感覚が味わえる
自分の吐いた息がモクモクとあがり、頬も耳も触れれば氷のように冷たい。
すべてを凍てつかせるような冷え切った空気の中に身をおいて、少しかじかんだ指先で不器用にスケッチしていく。ーーもうこれだけで特別な体験になります。
元々野外スケッチは非日常感が味わえる趣味だと思いますが、冬はまた格別です。
クリスマスマーケットやイルミネーションなどのイベントシーン
クリスマスマーケットでは、ヒュッテと呼ばれる小屋型のショップが並び、お店はもちろん、会場のあちこちでクリスマスの飾りつけがされています。
このスケッチは数年前、六本木のクリスマスマーケットで描いたもの。
クリスマス関係のオブジェを売っていたお店で、入口には大きなくるみ割り人形の兵隊が並んでいました。そしてお店の屋根にはプレゼントをソリに詰め込んだサンタクロースが。
こうした装飾は見ているだけでも楽しいものですが、自分の手でスケッチするといっそう感慨深いものとなります。
また肩車している親子、お店に並ぶ列を整理しているスタッフ、フードコートで温かい食べ物を口にしてほっとしている友人たちなど。クリスマスマーケットで見られるワンシーンを描いてみるのも楽しいと思います。
着色までする余裕があれば、イルミネーションや夜景に挑戦してみるのもいいですね。空気が澄んだ冬は、他の季節より灯りの光がはっきりと見えます。
レアな雪景色スケッチも
あいにくと東京住まいのため、雪が降ってもすぐ溶けてしまうことがほどんと。まだ雪景色のスケッチは達成できていません。
でも数年前の大雪では、そり遊びする子どもたちあり(都内では豪雪地帯区分なのでソリ装備の家庭は多い)、雑木林をスキーで進む人あり、雪だるまが出迎えてくれる居酒屋あり、と珍しいシーンが見られました。
あの頃はまだスケッチできなかったので、もう一度大雪が降ってくれないかなとひそかに願っています。
他の季節とは異なる、冬スケッチの心得
冬スケッチは心構えと自己管理が必要
冬スケッチはできる人を選ぶかもしれません。絵のスキルではなく、心構えと自己管理という意味からです。少なくとも以下の理由から、初心者さん向けではないなと個人的には感じています。
冬スケッチに求められるもの✨️
- 寒さに耐えられる体力がある
- 防寒装備にお金をかけられる
- クオリティが低い自分の絵を受け入れられる
- 時短で描けるスキルがある
私は風景スケッチを始めたのが冬で、その後も毎年冬スケッチを続けてきました。
数年経ってしっかり自己管理できるようになるまで、もう毎年のように風邪をひいていましたね。
まずは近所や近場の街でスケッチを試してみて、本当にやれそうかどうか感触をつかんでみるのがおすすめです。
最初の冬スケッチで確認したいこと✨️
- 自分の体がどこまで寒さに耐えられるか
- 服装に不足はないか
- 他の季節に比べて体力の消耗はどれくらい早いか
- 寒さによる筆記速度の低下、集中力への影響はどれくらいか など
冬スケッチでは理想を高く求めない
1時間くらい外にいると発熱手袋をしていても指先がかじかんできます。
このようなハンデを背負ってのスケッチとなるため、「完成できただけで偉い✨️ この冬のさなかに野外スケッチに出かけてきただけでも金賞もの」と考えるくらいで、ちょうどいいかと。
コントロールが不完全な手は思わぬ場所に線をひいてきます。そんなところ描くつもりなかったのに、という所へ線がのびてしまう。形の精度ももちろんガタ落ち。
けれどもこれが冬スケッチの自然な姿なんだ、と良い意味での諦めが肝心です。他の季節のようにクオリティを追求すると、ただでさえ寒さで体がつらいのに、心までつらくなってしまいます。
時短で描けるスキルを磨いておく
冬スケッチで風邪をひかないためには屋外の滞在時間を減らすのが最も効果的。つまり、一枚のスケッチにかける時間を短くし、手早く仕上げるようにします。
単に手の動きを早くするだけでは人力の限界があります。ほんとうに時短で描くためには、元々線が少ない省略スタイルで描く、陰影を上手に使うなど、時短専用のスキルを用いる必要が出てきます。
もちろん冬になってから、スケッチの中で実践練習はできるけれど。マスターする前に何度か風邪をひくことになると思います(経験者)。
時短で仕上げるスキルは、以前ご紹介した『3段階早描きスケッチ: 旅先で楽しむ』(佐々木 清:著)や『15分スケッチ練習帖: なぞって・描いて“線による表現”を30日で完全マスター』(山田 雅夫:著)といったスケッチ教本で学ぶことができます。
室内への分業も積極的に行う
野外スケッチはその名の通り、基本的には外で作品を仕上げます。
私は時間が足りない時は室内仕上げ派ですが(^^ゞ 、中にはすべて野外で描くことにこだわってるスケッチャーさんもいるかと。
しかし冬スケッチだけは室内への持ち帰り、分業も検討されたほうが無難です。
たとえば、45分で終わらなければ持ち帰る・外では外形だけ描く、など。自分なりのルールがあるとその場で判断を迷わないと思います。
秋にスケッチ旅へ出かけた時は、外で着色する余裕がありました。
でも12月半ばの冬スケッチでは街中でも寒くて、「こりゃだめだ」と早々に着色を諦めました。夕暮れ時は外形線を仕上げるのさえ、震えながらやっとでしたね
元気でいれば、またスケッチに出かけられます。しかし風邪をひいてこじらせたりしたらスケッチできないのはもちろん、仕事や家事といった日常生活にも影響が出てしまいます。
冬スケッチの服装はアウトドアを意識して揃えよう
ヒートテックやアウトドア用品があれば利用する
冬の野外スケッチになにを着ればいいのか迷ったら、作業着または登山・アウトドア用の服装を用意するとはずれがないと思います。
それからユニクロのヒートテックなど、家にある発熱素材の服やタイツもぜひ活用しましょう。全部新たに買うより安くすみます。
もし登山やキャンプの経験がある人なら、アウターや発熱シャツ、タイツなどを転用できます。私は冬の低山へいく時と同じ服装が冬スケッチにちょうどいい感じでした。
富士山やアルプスなど、ガチの冬登山用ではなくて。標高の低い高尾山などの低山向け装備で十分ですよ♪ 念の為。
新たに買うならどこで買えばいいか
なければワークマンか、東京住まいの人なら御徒町のロンドンスポーツあたりで揃えると安く揃います。
登山用品店の大型のセールのタイミングがあえば、こちらも狙い目。元値が高い分、セール時には半額まで割引されることも。
ワークマン
街で着ていても違和感がない、カジュアルな服装で揃えたい方におすすめ。人気の柄などはすぐ売れてしまいますが、ネットショップから予約して店頭受取も可能です。価格も安いので、遠方の方でも気軽に通販しやすいかと。
ロンドンスポーツ
初めての人には近づきがたい雰囲気ですが、店員さんが親切。「冬の野外スケッチの寒さに耐えられる、防寒防風の服がほしい」といえば、見繕ってくれると思います(その昔、山が初めてと言ったら上から下まで全部見繕ってくれました)。
実際の服装例
参考までに、12月中旬に横浜へ日帰りスケッチに行った際の装備をご紹介します。
ご参考までに、当日の天気はこんな感じ。15~17時頃までは大さん橋という、海の上に突き出た場所にいました。ほぼ海といった場所なので予報値よりも気温が低く、風が強かったと思われます(東京7度の日はもっと暖かかった)。
しかもこんな時にかぎって、電熱ベストが電池切れ^^; それでも体の芯が冷えない程度には耐えられました。
これから服装を揃える方は似たようなものを買えば、4時間程度の野外スケッチには対応できると思います。
ではでは。上に着ていたものから、写真付きでご紹介しますね。
上着:耐寒・防風仕様のジャケット
内側がフリース、外側が防風仕様のジャケットを着ています。
昔、御徒町のロンドンスポーツで5千円せずに買ったもの。冬の低山歩きに使っていました。
隙間風防止に袖口を絞れるのもグッド。手首からの隙間風は電熱ベストの効果も下げてしまいます。
この手のマウンテンジャケットは登山用品屋では数万円以上とかなり高額。ワークマンだと似たような機能でもっとカジュアルなものが数千円程度で買えるのでおすすめです。
保温着:電熱ベスト
自重堂のオリジナル製品を使っています。私が買ったのは、「FEVER GEAR 電熱ベスト FGA20000」という製品。
ベストに付属しているバッテリーだと2・3時間しか持ちません。一日スケッチするには足りないので、市販の大容量・軽量バッテリーを接続して使っています。
中間着:発熱フリース
山で使っていたモンベル社のフリースを再利用してます。発熱フリースやセーターなど、少し厚みがあり、さわって温かい素材のものがいいかも。
中間着2:シャツ
今回は他をガッチリ固めていたので、シャツは普段着用のものにしました。これもできれば発熱素材のものを選びたいところ。
インナー:ヒートテック
普段着用と同じものを着ています。メリノウールや北国仕様のあったか下着でもいいとは思うけれど、あまり保温性能が高すぎると、移動の間に汗をかかないか心配。
温度調整の要はミドルなので、インナーはほどほどに温かいものをチョイスしています。
ボトムス:防風ズボン
ワークマンで買った、「ウォームクライミングパンツ」を履いてます。
内側はフリース地で保温効果があり、表面は防風・撥水仕様。冷えは足から来る部分も多いので、ボトムスは良いものを選びたいところ。内側が暖かくても、防風仕様でないと結局は冷えてしまうので注意。
本当は隙間風防止に、足の出入り口がゴムになってるものだとなおいいです、
タイツ:発熱素材のもの
山時代に買った古いメリノウールタイツを履いてます。ボトムスの性能がしっかりしていれば、普通のヒートテックタイツでも大丈夫ではないかと。
靴下
これまた山時代のメリノウールを履いてます。かなり生地が厚めで、足が守られているという暖かさを常に感じられて気分が良いです。一足持っておくと寒い室内でも重宝します。
メリノウールは底冷え防止に有効✨️
メリノウールはすごく温かい、という代物ではありません。しかしこれを着ていると体の芯から凍えることがなくなります。寒さが一定のところで押し留められる感じ。
山用だと高いけれど、ワークマンだと格安に入手ができます(売り切れが多い点は注意)
手袋(インナー+アウター)
スケッチ中は指の感覚が鈍らないよう、どうしても指先を出す必要があります。
とはいえ、全部の指がむきだしでは寒すぎるので釣り用の3本指カットのものを使ってます(フリーノット社:光電子® レイヤーテック インナーグローブ 3本カット)。
発熱素材なので、風のない日の街歩きには十分あたたかいです。これをインナーとして使います。
そしてその上から、指部分が外れるミトン型の手袋をアウターとしてかぶせています。これで往復の移動中も寒くありません。
冬スケッチでダウンしないためのポイント
無理に周遊はしない
冬スケッチを快適に行いたいと考えるならば。他の季節のように一日で複数の場所をまわらず、一箇所に留めるのが最善だと思います。
複数回っていると、どうしても寒さによる体の冷えが蓄積していきます。そうして体の芯まで冷えて切ってしまうと、あたたかいカフェで熱々の飲み物をすすりつつ、1時間は休憩しないと回復しないしません。
それならもう他の季節のような周遊は諦めて、ひとつの場所でおしまいとした方がいいと思うのです。その方が心身ともに余裕のあるスケッチが楽しめます。
そもそも冬は「野外スケッチをお休みします」というスケッチャーさんも少なくありません。外で活動しているだけでも十分すごいと思いますよ。
もし複数の場所を周遊する際は、一つの場所にとどまるのは45分以下にとどめます(最善は30分)。そして次の場所へと移動し、動くことで体をあたためます。この繰り返しで、一日に数枚を描き上げます。
定期的に行動食でカロリーを補充する
クッキーやチョコレートなど、一口サイズの行動食を用意します。これらを30分程度の間隔で1つ口にします。
野外スケッチで立ちっぱなしなり座りっぱなしでいても、カロリーは消費されていきます。体からエネルギーが失われれば、体力・体温の低下を招きます。そこでカロリーが消費されることを見越して、定期的な間食で補うようにします。
登山の講座で教えてもらった、バテないための行動食活用法です。野外スケッチでも役立ちます。
熱々の飲み物で体を温める
スケッチ後に体が冷えてしまったと感じたら、どこかで休憩して体を十分あたためてから帰りましょう。この一手間で風邪のリスクをだいぶ抑えられます。
私は地元でスケッチしている時は、ゴンチャという台湾ティーのお店で「チョコレートミルク」をよく飲んでます。
本当に冷えてしまった時は自販機のコーヒーやスープは少しぬくい、程度にしか感じられません。これでは体が温まらないので、直接ポットを火にかけて作られたような熱々のドリンクが必要になります。
ゴンチャのような”ホットステーション”がスケッチ先の近所にないか、出発前に確認しておくといいかもしれません。
足腰への労りも忘れずに
冬の寒い時期には、関節や筋肉に負担がかかりやすいもの。長時間立ちっぱなしでスケッチをしていると、体中がギシギシと固まり、しばらくは歩くのさえ大変になることがあります。
私もしばらくは足がしびれたように、満足に歩けなくなることがあります
そんな時は、スケッチの合間に軽いストレッチを取り入れましょう。例えば、ふくらはぎを伸ばすストレッチや、グーの拳でやさしくさすって筋肉をほぐすのがおすすめです。
家に帰ったら、入浴剤を入れたお風呂でゆっくり温まりましょう。バスソルトや炭酸系の入浴剤を使うと、冷え切った体がじんわりとほぐれていきますよ。
冬の冷えは手ごわくて、一度体の芯まで冷えてしまうと、暖房の効いた部屋にいてもなかなか温まりません。無理せず休憩を挟みながら、体のケアも忘れずに冬スケッチを楽しんでくださいね。
コメント