風景スケッチといえば、遠近法。
私にもそう考えていた時期がありました。風景スケッチの教本を開けばどれも、遠近法の話が出てくるからです。
だからがんばって遠近法を覚えようとしました。一度だめで、また数年経ってから試すこともありました。それでも理解はできませんでした。
けれども、今こうして風景画スケッチャーとして活動しているという不思議。
今思い返せば。遠近法がなくてもよかったし、それをマスターしようとして20年も無駄にしてしまったのがもったいなかった。どうして他の方法を探さなかったんだ、自分……!
では、遠近法なしでどうやって絵を描いてきたのか? なぜ遠近法は必須ではないと考えたのか。この2つについて今日はお話したいと思います。
もし私と同じように遠近法がネックで風景スケッチを諦めている方がいたら、ぜひ参考にしてみてください。
遠近法とはなにか
えんきんほう、と読みます。知らない方のためにごく簡単に説明すると、「風景における物の見え方の変化の法則」のようなものです。
風景スケッチの本では、「一点透視法」と「二点透視法」が王道としてよく紹介されています。
遠近法を知ってる方は、この説明で「ざっくりすぎるやろ」と思われますよね(^^ゞ 本当は本一冊かけて説明できるくらいの内容があるからです。
この手の教本を何冊か買いましたが、さっぱり身につきませんでした。無念……。
はい、私の遠近法に対する理解はこの程度です。
それでも風景画スケッチャー歴が5年を越えてきました。我ながら、なんとかなるものだなと思います(^^ゞ
遠近法が風景スケッチに必須、と言われているのはなぜか?
今説明したような法則が頭に入った状態で絵を描くと、「物理法則的に正しい絵を描ける」これが遠近法一番のメリットだと思います。
また、「たくさんの窓を簡単に描ける」「法則に基づいて絵をアレンジできる(通行人の追加、魚眼レンズ的な構図など)」など、スケッチ作業を楽にする、絵の幅を広げるというメリットもあります。
そんなわけで、できるものなら遠近法をマスターしておいたほうが何かと便利ではあります。
とはいえ、できないものは仕方ありません。むしろ遠近法ができないからと、風景スケッチという魅力的な趣味を諦めてしまう方がもったいないと思います。
「Freehand Sketching」が教えてくれた、遠近法が存在しない風景スケッチの世界
これまでの人生において。風景スケッチの教本を何冊か買ったものの、どれもまともにこなすことができず。「結局、遠近法ができないとだめなのか……」と私は行き詰まりを感じていました。
そして数年前。水彩や油彩の絵画教本を読むために洋書の読み放題サービスを契約していました。そこでスケッチの教本もいくつかあったので、今後の参考にいくつかダウンロードしてみたんですね。
それが、「Freehand Sketching」という本との本当の運命的な出会いでした。
これは遠近法や絵画について詳しくない、建築学科の生徒さん向けて書かれたという少し風変わりな風景スケッチ本です(建築家は企画などのプレゼンテーションの場において、家の完成イメージをスケッチにすることがあるとか)
代わりに、「建物と空の境界をたどればいいよ」「シンプルなフレームで構図を作れるよ」といった方法が紹介されています。
読み進めながら、私は思いました。「あれ? この本のやり方を適用すれば、遠近法がなくても風景スケッチは可能なのでは……?」
そしてこの本をヒントにしながら、実際のスケッチ練習を始めました。ここが私のスタートでした。
遠近法は不要。ただ見えるままに描けばいい、という発見
「Freehand Sketching」はもうひとつ、私にスケッチの大事なコツを教えてくれました。
それはよく観察すること。
ここだけは数をこなして上達する以外に方法はありません。しかも遠近法には頼れないので、よりシビアに対象を観察する必要があります。
当時の私はただただ目コピ(※目で景色を写し取る)で、物のサイズや辺の傾きを紙の上に再現するという練習を繰り返しました。
そうして数年が過ぎて、やっと気がつきました。
しっかり観察して描けば、描かれたものは自然と遠近法に沿ったスケッチになっているんですね。
私は遠近法という入口から風景スケッチの世界には入らなかったけれど。出口にたどり着いてみればそこは、遠近法という入口から進んで到達したゴールと同じ場所なのでした。
風景スケッチャー歴5年目。気づいたら遠近法がわかりかけていた
風景スケッチの本を読んでもさっぱりだった遠近法。実は最近、以前よりも(ようやく)わかってきました。
おそらくは50回以上に及ぶ野外スケッチを通じて、遠近法の実例をたくさん見てきたからだと思います。
きちんと観察に基づいて仕上がった作品は、おのずと遠近法に則って構成されています。
こうしてちょっとわかると、次回は頭の片隅に法則を入れた状態でスケッチを始められます。また、法則に外れたケースも見分けられるようになってきます。
私は遠近法の中でも、一点透視法が圧倒的に苦手でした。最初の数年は2点透視法の構図ばかりで絵を描いていたくらいです。
最近はなんとか、時間をかければ描けるようになりました。
5年かけてぐるっと遠近法のまわりをまわって。苦手で避けてきたつもりなんだけど、ふと気がつくとと以前よりは遠近法のことを理解できていました。
一生遠近法がわからないとしても。風景画を描くことができる
この5年の回り道を長いと思うかは人それぞれだと思います。
私自身はむしろこの回り道がなければ、一生遠近法を理解できないままだったと思います。
英語って。海外で日本語が通じない環境に放り込まれて、それで初めて上達したって話がよくあるじゃないですか。日本で参考書片手に勉強していた頃は読めない、しゃべれないだったのに。
だから今遠近法がわからない、そこがネックで風景画が描けないという方がいたら。もう遠近法は後に残して、先へ進んでみていいと思います。
見たままに描けば。遠近法の知識ゼロの人が描いたとしても、ちゃんと法則にのっとったスケッチが出来上がります。
もちろん遠近法を知っていれば。効率良く絵を描けるし、アレンジだって自由自在です。でもそこは応用の範囲だと思うのですね。最後まで作品を描き上げて、どんどん習作を増やしていくという、スケッチ初心者さんが重視する部分ではない。
ぜひ自分の目を信じて、絵を描いてみてください。描き続けていればおのずと遠近法がわかる日も来ます。
仮にそんな日が来なくても。風景画スケッチャーとしてやっていく上で問題はありません。
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